韓国人はお弁当を作らないって本当?物価高で変化する韓国の最新ランチ事情
「お昼、何食べる?」が挨拶代わり?韓国のランチ文化
日本では新学期や新生活が始まると、多くの人がお弁当箱選びに心を躍らせますよね。彩り豊かなお弁当は、もはや日本の文化「BENTO」として世界に知られています。しかし、お隣の韓国では、このお弁当文化が日本とは少し違うようです。韓国ドラマのオフィスシーンを思い浮かべてみてください。同僚たちと会社の近くの食堂でチゲを囲んだり、屋上でジャージャー麺の出前を取ったり…そんな光景が多くないでしょうか?
もともと韓国では、会社員は社員食堂で食べたり、周辺の飲食店で温かいランチを食べるのが一般的でした。多くの企業では「食代(식대/シクテ)」と呼ばれる昼食代が支給されたり、手頃な価格で利用できる社員食堂が完備されているため、わざわざ家からお弁当を持っていく必要がなかったのです。また、「冷めたご飯はちょっと…」という感覚や、キムチやナムルなど、汁気の多いおかず(パンチャン)を皆でシェアして食べる食文化も、一人で食べるお弁当が主流にならなかった理由の一つと言われています。
韓国では「밥 먹었어?(パンモゴッソ?/ご飯食べた?)」が挨拶代わりに使われるほど、「食事」はコミュニケーションの重要な時間。同僚や友人と熱々の料理を囲みながら話に花を咲かせるのが、ごく自然なランチスタイルだったのです。
物価高が後押し?「お弁当族」の静かなブーム
長年続いてきたそんな韓国のランチ文化に、今、大きな変化の波が訪れています。その主役となっているのが、自らお弁当を作って持参する「お弁当族(도시락족/トシラクチョク)」です。この変化の最大のきっかけは、近年の深刻な物価高騰です。外食ランチの価格が軒並み上昇し、会社員のお財布を圧迫。「ランチフレーション(ランチ+インフレーション)」という言葉が生まれるほど、毎日の昼食代が大きな負担となり、節約のために手作りのお弁当に切り替える人が増えているのです。
この動きをさらに加速させているのが、YouTubeやInstagramといったSNSの存在です。「직장인 도시락 브이로그(会社員 お弁当Vlog)」や「도시락 싸기(お弁当作り)」といったキーワードで検索すると、数多くの動画がヒットします。特別なキャラ弁ではなく、前日の残り物や簡単な常備菜を詰めた、リアルで真似しやすいお弁当の数々が、多くの共感を呼んでいます。これは、かつて「お弁当は学生か、子どものために母親が作るもの」というイメージが強かった韓国において、大人たちが自分のために、楽しみながらお弁当作りをしているという新しいトレンドと言えるでしょう。
また、健康志向やダイエットへの関心の高まりも、お弁当族の増加を後押ししています。外食では塩分やカロリーが気になるところですが、手作りなら栄養バランスを自分でコントロールできます。こうしたライフスタイルの変化が、韓国のランチ風景を少しずつ変え始めています。
進化する「K-BENTO」と変わらない食への想い
もちろん、韓国にも昔からお弁当は存在しました。代表的なのが「옛날 도시락(イェンナル トシラク/昔のお弁当)」です。アルミの弁当箱にご飯、キムチ炒め、韓国のり、ピンク色の魚肉ソーセージ、目玉焼きなどを乗せたもので、食べる前に蓋を閉めてシャカシャカと振って混ぜて食べるのが特徴。今ではレトロなメニューとして、食堂などで楽しむことができます。
一方で、最近SNSで注目を集めているのは、海外に住む韓国人たちが発信する「K-BENTO」です。アメリカなどでは学校給食が口に合わなかったり、手軽に食べられる韓国料理が少なかったりするため、子どもや自分のためにお弁当を作る人が多いのです。キンパ(韓国風海苔巻き)やチャプチェ、プルコギなどを彩りよく詰めたお弁当は、現地の友人たちからも大人気。こうした海外からの発信が、韓国国内のお弁当作りブームに影響を与えている側面もあるかもしれません。
外食文化が根強かった韓国で、お弁当作りが新たな選択肢として広がりつつあります。その背景には経済的な理由や健康志向がありますが、根底にあるのは「美味しいものを食べたい」という、食を大切にする韓国人の変わらない想いでしょう。皆で食卓を囲む温かい文化を大切にしながら、個々のライフスタイルに合わせた新しいランチの形が生まれている。韓国のランチ事情は今、まさに興味深い過渡期を迎えていると言えそうです。
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